農業分野での特定技能外国人受入れマニュアル
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個人農家や農業法人が、初めて特定技能外国人を受入れたいと考えたときに、
・どのうような仕事をさせることができるのか?
・自分の会社は特定技能外国人を受入れる基準を満たしているのか?
・外国人の雇用や労務管理はルールが厳しいのか?
・受入れ後の各種手続きはいっぱいあって面倒なのか?
などの疑問点や心配事があるかと思います。
この記事では、上記の問題を解決するために、農業分野での特定技能外国人の受入れに関する情報ついて詳しく解説していきます。
従事させる業務
農業分野の特定技能外国人には、主として、①耕種農業全般の作業(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)や、②畜産農業全般の作業(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)に従事させなければなりません。
【主たる業務】
①耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)
②畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
上記の業務内容には、栽培管理または飼養管理の業務が必ず含まれていることが必要であり、集出荷・選別等の業務にのみ専ら従事させることはできません。
【関連業務】
日本人が通常従事している関連業務(農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業等)に付随的に従事させことも可能です。
(日本人が通常従事することとなる関連業務の例)
① 受入れ企業(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物を原料または材料の一部として使用する製造または加工の作業
② 農畜産物(受入れ企業が生産した農畜産物が含まれる場合のみ)の運搬、陳列または販売の作業
③ 農畜産物を原料または材料として製造され、または加工された物(受入れ企業が生産した農畜産物を原料または材料の一部として使用し、製造され、または加工された物が含まれる場合のみ)の運搬、陳列または販売の作業
④ その他受入れ企業で耕種農業または畜産農業の業務に従事する日本人が通常従事している作業(畜産農業と耕種農業を複合経営している受入れ企業において畜産農業の技能を有する特定技能外国人が耕種農業の作業に従事する場合、冬場の除雪作業に従事する場合等)
上記の関連業務は付随的に従事させるもので、専ら関連業務に従事させることは認められません。
雇用契約と労務管理
特定技能外国人を受入れるためには、外国人と結ぶ雇用契約が適切であり、その雇用契約を確実に履行しなければなりません。
特に、次の労務管理については、気を付けなければなりません。
労働基準法では、農業は労働時間・休憩・休日の規定が適用されないこととなっており、特定技能外国人についても、日本人労働者と同じく適用されません。
しかし、適切な労働時間・休憩・休日を設けるなど、労働基準法に基づく基準も参考にしながら働きやすい環境整備に努めることが求められます。
また、特定技能外国人はフルタイムでの雇用(週30 時間以上かつ 5 日以上、かつ、年 217日以上の勤務)が条件となっていますので、パートやアルバイトでの雇用は認められず、同時に複数の企業に雇用されることは認められていません。
社会保険と労働保険
法人や個人事業主で一定の条件がある企業は、社会保険と労働保険の加入が義務付けられています。
社会保険
社会保険の適用について、個人事業主の場合は、原則として国民健康保険と国民年金に加入し、法人の場合は、健康保険と厚生年金に強制加入することになります。
医療保険 | 公的年金 | |||
健康保険 | 国民健康保険 | 厚生年金 | 国民年金 | |
個人事業主 | 原則 | 原則 | ||
法人 | 強制適用 | 強制適用 |
労働保険
労働保険の適用について、個人事業主の場合は、労働者が常時5人未満の場合には、「暫定任意適用事業」といって、原則として任意加入となります。労働者が常時5人以上いる個人事業主と法人は、労働保険は強制適用となります。
労災保険 | 雇用保険 | |
個人事業主(5人未満) | 任意適用 | 任意適用 |
個人事業主(5人以上) | 強制適用 | 強制適用 |
法人 |
特定技能外国人を受入れる企業は,社会保険と労働保険に関する法令を遵守していることが求められます。
そのため、保険加入義務のある企業が、加入手続きを怠っている場合は、受入れ基準を満たさないことになります。
受入れ企業の基準
特定技能外国人を受入れるには、受入れ企業が満たすべき多くの基準が定められており、その基準を満たさない場合は、外国人を受入れることができません。
受入れ企業が満たすべき基準については、次の記事をご参照ください。

中小・小規模企業の深刻な人手不足に対応するため、建設・農業などの14分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受入れることができる特定技能制度。 では、人手不足の企業であれば、どの企業でも特定技能外国人を受入れできるのかというと、そう簡単ではありません。 特定技能外国人…
さらに、農業分野の固有の基準として、受入れ企業には労働者の雇用経験が求められます。
労働者の雇用経験
受入れ企業には、雇用する特定技能外国人に対して適切な労務管理と受入れを行うため、過去5年以内に同一の労働者を6か月以上継続して雇用した経験が求められます。この労働者には、技能実習生も含まれます。
同一の者を6か月以上継続して雇用した経験が求められるので、短期アルバイトの者の雇用期間が累積して 6 か月を超えたとしても、雇用経験として認められません。
派遣先として受け入れる場合には、同一の者を 6 か月以上継続して雇用した経験か、派遣先責任者講習を受講した者を派遣先責任者として選任していることが求められます。
受入れ後にすること
農業特定技能協議会への加入
初めて特定技能外国人を受入れた場合には、外国人の入国後または特定技能1号への在留資格変更後4か月以内に「農業特定技能協議会」に加入し、加入後は協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。
4か月以内に協議会に加入しない場合には、特定技能外国人の受入れができませんので、忘れずに加入しなければなりません。
■「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム
(個人用)
(法人用)
また、協議会に対し必要な協力を行わない場合も、特定技能外国人の受入れができません。
各種の届出
特定技能外国人を受け入れた場合には、受入れ・活動状況に関する定期的な届出と雇用契約等の変更に関する随時の届出が義務付けられており、届出をしなかったり、虚偽の届出を行った場合は、罰則の対象となりますので、忘れずに提出しなければなりません。
届出の種類 | 届出のタイミング | 届出の主な内容 | |
随時届出 ※事由発生日から14日以内 |
雇用契約に関する届出 | 雇用契約の内容等に変更等があったとき | 変更、終了、新たな契約の締結時の内容等 |
支援計画に関する届出 | 支援計画を変更したとき | 計画変更時の内容等 | |
登録支援機関との委託契約に関する届出 | 登録支援機関との契約締結、契約変更、契約終了するとき | 締結時や契約変更時の内容等 | |
外国人材の受入れが困難となった際の届出 | 受入れが困難となったとき | 困難となった事由、外国人材の現状、活動継続のための措置内容等 | |
不正行為を知ったときの届出 | 不正行為の発生を受入れ機関が知ったとき | 発生時期、認知した時期、当該行為の内容とそれに対する対応等 | |
定期届出 ※四半期ごとに翌四半期の初日から14日以内 |
外国人材の受入れ・活動状況に関する届出 | ※ 四半期の定め 第1四半期:1月1日から3月31日まで 第2四半期:4月1日から6月30日まで 第3四半期:7月1日から9月30日まで 第4四半期:10月1日から1212月31日まで |
外国人材の総数、外国人材の氏名、国籍等の情報、報酬の支払い状況、従業員数、各種公的保険に係る適用状況等 |
支援実施状況に関する届出 | 各種支援の状況(定期面談実施時の内容、対応結果等) |
詳しい届出手続方法については、次の出入国在留管理庁のHPをご参照ください。
この記事のまとめ
農業分野で特定技能外国人を受入れるには、一般的な基準にプラスして農業特有の基準があり、両方の基準を満たさなければなりません。また労働関係法令に関しても農業特有のルールがありますので、ルールを守って雇用しなければなりません。
この記事についてのより詳しい内容等は、農林水産省のHP「新たな外国人材の受入れのための在留資格「特定技能」について (農業分野)」をご参照ください。
秋穂法務事務所では、特定技能外国人の受入れ前から受入れ後まで、登録支援機関としての支援も承っております。
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